Porch COLUMNぽおちコラム

2022新年号「飛天」

2022 Winter

昨年、一昨年と、世界も国内も新型コロナウイルスに翻弄された2年間でした。それぞれの国で対処の仕方は異なるものの、今年に入って波の振幅が少しずつ抑えられることを期待します。この2年の間に感染によって世界も国内も経済は大きく落ち込みました。世界各国で大幅な金融緩和や大規模な財政出動が行われ、経済のさらなる悪化を食い止めようと努めてきましたが、これからそれがどのような反動となって表れるか予測するのは難しいようです。米国と中国の大国間の経済や安全保障上の対立がさらに予測を難しいものとしています。昨年末、ロンドンで開かれた「COP26」での気候変動対策もこれから大きな負担となって表れてきます。経済負担において一番影響を受けるのは、世界経済で4割のシェアをもつようになった新興国・途上国です。いつの時代も事が起きて一番影響を受けるのは弱い国々であり弱い人々です。

2022年の干支は「壬寅」で、十干が壬(みずのえ)、十二支が寅(とら)にあたります。この年は、春の草木に新芽が出ようとして膨らんだ状態とされ、厳しい冬を越えて新しい成長の礎となるイメージです。このイメージのように、この一年が弱い国々や弱い人々にとって新しい成長のはじまりとなることを願うばかりです。

メジロの写真

会社の近くに、陶芸の現代作家の作品を月ごとに展示する小さなギャラリーがあります。昼食に出た帰りに時折立ち寄ることがあります。ふだんは眺めるだけで終わるのですが、気に入ったおもしろいものがあると細身の熱心な若い店主に訊ねることがあります。値札を見ても3千円から1万円ほどで買えるものが多く、気が張ることはありません。昨年の夏ごろ「飛天」と題した展示があり、外からその一部が見えたので久しぶりに店内に入りました。飛天とは諸仏の周囲を飛び回りその功徳をたたえる天界の神々で、土を素朴に焼いてつくられた飛天が天界を飛び回るように窓際に飾られていました。飛天の下には仏像がいくつか並べられていたので、その一つを手に取ってみました。10㎝にも満たない粗削りの子供のように可愛らしい仏陀の立像で、右手の指を天に左手の指を地に向けていました。店主によれば、お釈迦様が誕生した時に言ったといわれる「天上天下唯我独尊」を表しているそうです。その意味は「この広い宇宙の中で、人間に生まれなければ果たすことのできない、たった一つの究極の目的がある」、つまり「どんな人も尊い目的を果たすために人間に生まれてきた、その意味においてすべての人はみな平等である」ということだそうです。

強い国々や強い人々にしても、弱い国々や弱い人々にしても、それぞれに果たすべき尊い目的があって、国として人間としてこの地球というかけがえのない星に生まれてきたのであれば、それぞれが隔てなく謙虚であり寛容であるべきだと思います。小さな仏像はいま私の手元にあります。はるか遠くを見ているようで、悪戯っぽく笑っているようにも見えます。

新型コロナウイルスが感染拡大してから3年目を迎えました。今年こそ収束の方向に向かってほしいものです。皆様はじめご家族が安心して毎日を過ごせますよう、心よりお祈り申し上げます。

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