Porch COLUMNぽおちコラム

2022夏季号「幸せな会社」

2022 Summer

最近、企業をいろいろな角度から見ていくとき、「幸せな会社」という視点でよく論じられるようになりました。人生を過ごす時間で見れば、人生の3割が働く時間だと言われ、この3割を生き生きと働くことが、豊かな人生、幸せな人生を送るためには必要だと言われています。豊かな人生、幸せな人生を送るためには、働きがいのある、幸せに働ける会社をつくることが一番です。そのことは、お客様にとっても自然と満足度の高い会社になっていきます。働きがいのある、幸せに働ける会社をつくるには、就業条件などの環境を整えるとともに、働くことの意義を見出すことが重要です。働くことの意義は、その企業の個性ともいえる理念に基づいて、社会での存在意義を明確にし、仲間と共に懸命に働くことによって見出すことができます。

私たちは企業理念として、「住まいづくりをとおして、日々の暮らしに幸せを見出す感性と、日々の営みに平和を培う理性を育みながら、人々の幸せな暮らしと社会の平和な営みを願い、力を尽くしていきます」と謳っています。私たちはこの理念に基づいて、私たちも人々も、豊かな人生、幸せな人生を送ることを願っています。しかし、今回、幸せに働ける会社をつくるには、大きな前提があることを思い知らされました。

花の写真

ロシアのプーチン大統領が、2月24日にウクライナに軍事侵攻を始めてから5カ月が経ちました。 世界の安全保障と経済を巡る風景は一変し、600万人を超える難民が国境を越えました。欧米や日本は結束して経済制裁を科していますが、各都市で無差別攻撃を受け、すでに南部のマリウポリは制圧され、今は東部のセベロドネツクで激しいい攻防が続いています。私たちは毎日映像で、怒りや悲しみの中で逃げ惑うウクライナの人たちの姿を見ています。彼らは一瞬にして日常の住まいを奪われました。そこにはもはや、幸せな暮らしも、平和な営みもありません。幸せを見出す感性も、平和を培う理性も、一瞬にして打ち砕かれました。住むことは暮らすことであり、生きることです。生きるための器が住まいです。住まいを一瞬にして奪われることへの怒りや悲しみを、どう受け止めればよいのでしょうか。

私たちは、住まいづくりをとおして、働くことの意義を見出し、私たちも人々も、豊かな人生、幸せな人生を送ることを願ってきました。しかし、そのことが一人の独裁者の出現で、たわいもなく打ち砕かれるところを目の当たりにしました。社会が他者に寛容でなくなったとき、社会の弱いところに偏ったポピュリズムが生まれ、その一瞬の隙を突くように独裁者があらわれます。プーチンが狂気かわかりませんが、大きな権力が彼を腐敗させ、現実から遠ざけたのです。私たちは、働くことの意義を見出すためにも、拠って立つべき社会が他者に対して寛容な社会であるかどうかを、常に確かめておかなければなりません。

2年余り続いた新型コロナウイルスも、ようやく落ち着きを見せています。新たに始まったウクライナへの軍事侵攻は、世界の政治・経済を大きく変えようとしています。豊かな人生、幸せな人生を送るためには、働くことの意義を見出すとともに、社会の在り方を常に問い直す勇気を持たなければならないことを思い知らされました。

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