Porch COLUMNぽおちコラム

2023 夏季号「遠くを見なさい」

2024 Winter

2023 夏季号「遠くを見なさい」

会社の応接室には小さな額が掛かっています。そこには8行からなる詩のようなものがあり、人の一生をどのように見るのか、そしてどのように生きるのかについて書いてあります。

遠くを見なさい
流れる雲は瞬く間に空に消えてゆく
寄せる波は瞬く間に海に消えてゆく
移りゆく世界に、確かなものはない
流れる雲のように、寄せる波のように
今を生きなさい
スリリングに生きなさい
そして、もとの空へ、もとの海へ

この中の、移りゆく世界とはどのような世界なのでしょうか。
小さな額の裏側をはずすと、再び13行からなる詩のようなものが出てきます。

移りゆく世界とは
無数の粒子が飛び交う一元的な世界
粒子は龍雲のごとく宇宙を飛び交い
広大無辺にして一体の世界をつくる
一瞬にして粒子は集まり密となり
一瞬にして粒子は分かれ疎となる
粒子が集まり密となるとき
その影は五蘊を生じ私とあなたを現す
粒子が分かれ疎となるとき
その影は五蘊を滅し私とあなたを隠す
私もあなたも一体の世界に現れ
一瞬の時を共にする
一瞬の慈しみを共にする

移りゆく世界とは、無数の粒子が自由に動き回って、粒子が密なところと疎なところがあるだけの世界です。そこには粒子の濃淡があるだけで、私という実体はなく、あなたいう実体もありません。私もあなたも一続きの一瞬の世界に現れ、そして消えていきます。

私たちは、住まいづくりをとおして、人々の幸せな暮らしと社会の平和な営みを願い続けています。人々の幸せはつくられるものでなく、日々見出すもので、その感性は年を重ねゆく人々の美しい背姿に育まれます。社会の平和はもたらされるものでなく、日々培うもので、その理性は命を深めゆく人々の優しい背姿に育まれます。私たちは、流れる雲のように、寄せる波のように、一続きの一瞬の世界に生きているからこそ、その感性を日々研ぎ澄まし、その理性を日々磨き上げなければと思います。
GREEN PARKは、その研ぎ澄まされた感性を、その磨き上げられた理性を、美しく、優しく映し出す濃密なひろがりであってほしいと思います。その広がりは、前に出ることのない美しさと、残ることのない普遍性に満ちたものであってほしいと思います。

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