TOKYO TRAVELOGUE東京紀行
お気に入り探し!
2023 Winter
師走に入ったばかりのとある平日。
小春日和に誘われて、懐かしの地に降り立った。
あれから何年の月日が経ってしまったのだろうか。
巣鴨と駒込の間、やや巣鴨寄りに位置する我が母校。
遅刻スレスレに駒込の駅に降り立ち、ダッシュするのがいつの間にか日課となっていた日々。
そんな不真面目な私ですら、駅の反対にある「リクギエン」という何やら“ごっつい”庭園の存在に気づき、
いつの間にか意識するようになったが、一度くらいは行ってみようと思ったまま終わってしまった高校時代。
半世紀を迎えたこの歳にして、初めて、園内に足を踏み入れた。
まさに、圧巻の大名庭園。
それもそのはず、『水戸黄門』にも登場する川越藩主、柳沢吉保自らが設計、指揮し、
7年の歳月をかけて築園した江戸二大庭園の一つで、国の特別名勝にも指定された文化財。
正直、ここまで“ごっつい”とは思っていなかった。
この庭園には中国古典の景観が八十八境として映し出されているようで、
何しろ、様々な顔があって、まったく飽きが来ない。
奥に見える橋は「渡月橋」と言うらしいが、この写真が現在のお気に入り。
気がつくと、これ以上ないほどに歩みが遅くなり、噛みしめるように心と体で感じる風景。
齢のせいか、其処彼処に深く沁み入る何かがある。
唄を詠む趣味は今のところないが、歌人の気持ちは今回、だいぶわかった気がする。
結局、正味三、四時間はここに滞在したこの日、想像を超えて癒された、我ながらとても良い休日だった。
季節や天候などによっても、そして歳を重ねても、
目に見える、そして肌で感じる景色はきっと変わっていくのだろう。
年間パスにしなかったことと高校時代に訪れなかったことをだいぶ後悔しながら、
ゆったりと帰宅の途についた。